前から読みたいと思っていて、なかなか読めなかった本、
戦後史の正体:対米従属と自主外交
「戦後史の正体 1945―2012」孫崎亨著
をGemini要約しました。
著者は日本の左派ということらしいですが、「この本の内容は良く書けている」と
各分野の評論家が、認めていた本のようです。
非常に興味のある内容でした。
これから、各章の内容を自分なりに吟味していきたいと思います。
第4章と第6章の内容は、自分の見解と相違するところはありますが、
孫崎氏の主張が正しいのか、正しくないのか? 自分の見解も交えて考えてみたいと思います。
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| 「戦後史の正体 1945―2012」孫崎亨著 |
戦後史の正体:対米従属と自主外交
「戦後史の正体 1945―2012」孫崎亨著
■全体要約
元外交官・孫崎享氏による**『戦後史の正体 1945-2012』**は、日本の戦後史を「アメリカへの従属」か「自立(自主外交)」かという対立軸で読み解いた刺激的な一冊です。
本書の要点を整理して解説します。
1.
本書のメインテーマ:対米従属 vs 自主外交
孫崎氏は、戦後の日本政治を貫く構造を**「米国追随勢力(対米従属派)」と「自主外交勢力(対米自主派)」**の暗闘として捉えています。
- 対米従属派: 米国の要求を最優先し、その見返りに権力基盤を安定させる勢力(例:吉田茂、中曽根康弘、小泉純一郎など)。
- 対米自主派: 日本の国益を考え、米国と距離を置いたり、アジアとの連携を模索したりする勢力(例:鳩山一郎、石橋湛山、田中角栄、鳩山由紀夫など)。
2.
繰り返される「自主派」の失脚
本書の核心は、**「米国にとって不都合なリーダー(自主派)は、検察、メディア、あるいは党内政争といった手段で必ず失脚させられてきた」**という指摘にあります。
主な事例
- 田中角栄: 日中国交正常化や独自の資源外交を展開したが、ロッキード事件で失脚。孫崎氏はこれを米国の関与による「国策捜査」の側面から分析しています。
- 竹下登: 円高を容認せず、米国の経済要求に抵抗したため、リクルート事件で退陣。
- 小沢一郎・鳩山由紀夫: 普天間基地の「最低でも県外」移設や「東アジア共同体」を掲げたが、政治資金問題(陸山会事件)やメディアの猛バッシングにより短期間で崩壊。
3.
誰が「対米従属」を支えているのか?
孫崎氏は、米国が直接日本を支配しているというより、日本内部の**「外務省」「検察庁」「大手メディア」**などが米国の意向を忖度(あるいは共有)し、番人のように機能していると論じています。
「日本のエリート層は、米国の期待に応えることが自分たちの地位を守ることになると考えている」という構造的な批判が展開されています。
4.
時代背景と「戦後史の正体」
本書が出版された2012年は、民主党政権が崩壊し、再び自公政権(安倍政権)へと戻る時期でした。
- 1945年〜1950年代: 冷戦下での組み込み。
- 1970年代: 経済大国化による米国の警戒と叩き。
- 1990年代以降: 冷戦後の「年次改革要望書」等を通じた日本の構造改革(新自由主義の導入)。
これらはすべて、日本を米国の戦略に合致する形に作り変えるプロセスであったと結論づけています。
まとめ:読者へのメッセージ
孫崎氏が本書を通じて伝えたいのは、**「日本人は、自分たちが真に独立した国家であるという錯覚を捨て、いかに米国と対等に向き合うかを直視すべきだ」**という警告です。
いわゆる「陰謀論」として片付けられることも多い内容ですが、元トップ外交官という視点から、公文書や具体的な政争の推移を繋ぎ合わせた分析は、多くの読者に「歴史の裏側」を再考させるきっかけを与えました。
■目次
孫崎亨氏の著書『戦後史の正体
1945-2012』の目次は、日本の戦後を「対米従属」の歴史として読み解くための構成になっています。
以下に主要な章立てをまとめました。
『戦後史の正体』目次構成
はじめに――なぜ今、戦後史を問うのか
- 日本は本当に「独立国」と言えるのか
- 隠されてきた「対米従属」の構造
第1章:日本の戦後はどのように始まったか
- 終戦とマッカーサーの支配
- 憲法制定と象徴天皇制の裏側
- 吉田茂が選択した「追随」の道
第2章:自主独立を夢見た政治家たち
- 鳩山一郎とソ連国交回復の衝撃
- 石橋湛山が目指した「小日本主義」
- 岸信介の「安保改定」の真意とアメリカの警戒
第3章:冷戦下の「対米協力」と「変節」
- 佐藤栄作と沖縄返還の密約
- 官僚機構が「親米」に染まったプロセス
第4章:アメリカに潰されたリーダーたち
- 田中角栄:日中国交正常化と資源外交の代償(ロッキード事件)
- 竹下登:円高阻止とリクルート事件の謎
- 橋本龍太郎:米国債売却発言と金融敗戦
第5章:小泉・竹中路線という「究極の従属」
- 郵政民営化と年次改革要望書
- 経済主権を差し出した構造改革
第6章:民主党政権の挑戦と挫折
- 鳩山由紀夫:普天間「県外」移設と東アジア共同体の夢
- 小沢一郎:検察・メディアによる「政治殺戮」
- 菅・野田政権における「従属への回帰」
第7章:日本の正体――私たちはどこへ向かうのか
- 検察、外務省、メディアが形成する「対米従属の番人」
- 21世紀の日本が選ぶべき道
ポイント: 各章のタイトルを見ればわかる通り、著者は一貫して**「アメリカの意向に沿わない動きを見せた政治家が、いかにしてスキャンダルや政争によって排除されてきたか」**という視点で、事件の背後関係を記述しています。
■「はじめにーなぜ今、戦後史を問うのか」
『戦後史の正体』の導入部である**「はじめに――なぜ今、戦後史を問うのか」**は、本書全体を貫くショッキングな仮説と、著者がこの本を書かざるを得なかった切実な問題意識が語られています。
要点を整理して解説します。
1.
日本は本当に「独立国」なのかという疑念
孫崎氏は冒頭で、現代の日本人が抱いている**「1952年のサンフランシスコ講和条約によって日本は独立した」という常識**に疑問を投げかけます。
- 形式的な独立と実質的な属国: 表面上は独立国家の体裁を整えているが、実態は依然として米国の強い影響下(あるいは支配下)にあるのではないか、という問いです。
- 思考停止への警告: 多くの日本人がこの「従属構造」に無自覚であり、それを「日米友好」という美しい言葉で覆い隠している現状を危惧しています。
2.
政治の混乱と「見えない力」の存在
執筆当時(2012年)の、民主党政権の迷走と崩壊のプロセスが、本書を書く直接の引き金となっています。
- なぜ改革は潰されるのか: 国民が選んだはずの政権が、なぜ普天間問題や小沢一郎氏の事件などでこれほどまでに行き詰まるのか。
- 外圧の正体: それは単なる政治家の能力不足ではなく、戦後から一貫して存在する**「米国とそれに追従する国内勢力」という巨大な力**が働いているからだと指摘します。この「見えない力」の正体を暴かない限り、誰が首相になっても日本の混迷は終わらないと主張します。
3.
戦後史を「対立軸」で捉え直す
歴史は単なる出来事の羅列ではなく、「対米従属」か「自主独立」かという明確な対立軸で見直すべきだと提言します。
- 新しい眼鏡: この視点(眼鏡)を持って戦後史を眺めると、ロッキード事件やリクルート事件、あるいは歴代首相の短命の理由などが、すべて一本の線でつながると述べます。
- 真実を知る義務: 過去の歴史において「何が起きたか」の真実を知ることこそが、今の日本を縛る呪縛を解く唯一の方法であると説いています。
「はじめに」の結論:国民への問いかけ
孫崎氏は、「なぜ今、戦後史を問うのか」という問いに対し、**「今の日本が抱える閉塞感の正体は、すべて戦後史の闇の中に隠されているからだ」**と答えています。
著者のメッセージ: 私たちは「アメリカが日本を守ってくれている」という物語を信じ込まされてきたが、その代償として何を失ってきたのか。本書はその「正体」を白日の下にさらすための挑戦状である、という極めて強い決意が示されています。
■第1章「日本の戦後はどのように始まったか」
『戦後史の正体』の**第1章「日本の戦後はどのように始まったか」**は、戦後日本の「対米従属」という骨組みが、いつ、誰の手によって、どのように作られたのかを解き明かす非常に重要なパートです。
この章の要点を3つの主要なトピックで解説します。
1.
終戦直後の二つの路線:東久邇宮とマッカーサー
1945年、敗戦直後の日本には、まだ「自立」の可能性がわずかに残っていました。
- 東久邇宮稔彦王内閣: 日本の伝統を維持しつつ、主権を維持しようと試みました。しかし、GHQ(マッカーサー)の要求に抗しきれず、わずか54日で退陣に追い込まれます。
- マッカーサーの絶対権力: マッカーサーは「神」のような権威で日本を統治し、天皇制を維持する代わりに、日本を米国の戦略的支配下に置く構造を確立しました。
2.
憲法と象徴天皇制の「バーター」
孫崎氏は、日本国憲法の成立過程について、純粋な民主化だけでなく**「高度な政治的取引」**があったと分析しています。
- 天皇制の維持: 米国は、冷戦を見据えて日本を安定させるため、天皇の処刑(戦争責任追及)を避け、象徴として残す判断をしました。
- 憲法第9条: 一方で、日本が二度と米国を脅かさないよう、軍事力を持たせない憲法を導入しました。これにより、「軍備を持たない代わりに米軍の駐留を認める」という日米安保の原型がセットで出来上がったのです。
3.
「対米従属」の設計者・吉田茂
第1章で最も批判的かつ詳細に描かれるのが吉田茂です。孫崎氏は吉田を「戦後民主主義の父」としてではなく、**「徹底した対米従属を選んだリアリスト」**として描きます。
- 吉田ドクトリン: 軽軍備・経済重視の姿勢。これは一見賢明な選択に見えますが、孫崎氏に言わせれば「防衛を米国に丸投げし、引き換えに米国の要求をすべて飲む」という歪んだ独立の形でした。
- 自主独立派の排除: 吉田は、米国と対等な外交を目指そうとする勢力(重光葵や芦田均など)を排除し、外務省内に「親米こそが国益」という強固な官僚文化を根付かせました。
第1章の結論
孫崎氏は、この時期に**「アメリカの期待に応えることで権力を維持する」**という日本の政治・官僚機構のテンプレートが完成したと述べています。
「戦後日本のスタートラインにおいて、我々は『独立』の名を借りた『従属』のレールに乗せられたのだ」という、本書全体の通奏低音がここで提示されます。
この章を理解すると、なぜその後の歴代首相が、アメリカの顔色を伺わざるを得なくなったのかという「呪縛」の起源がよく見えてきます。
■第2章「自主独立を夢見た政治家たち」
『戦後史の正体』の**第2章「自主独立を夢見た政治家たち」**は、吉田茂が作り上げた「対米従属」の路線に対し、果敢に「日本の自立」を求めて抗った政治家たちの挑戦と、その挫折を描いています。
この章で焦点が当てられる3人の主要人物を中心に要約します。
1.
鳩山一郎:ソ連国交回復による「真の独立」への挑戦
吉田茂のライバルであった鳩山一郎は、アメリカ一辺倒の外交から脱却し、日本が国際社会で独自の地位を築くことを目指しました。
- 北方領土と日ソ国交回復: アメリカは日ソの接近を嫌い、執拗に妨害工作を行いました(いわゆる「ダレスの恫喝」)。しかし、鳩山は病身を押して訪ソし、日ソ共同宣言を成し遂げます。
- 意図: ソ連との国交を開くことで、国連加盟を果たし、アメリカ一極集中ではない「多角的な外交」を展開しようとしました。
2.
石橋湛山:リベラルな「小日本主義」
鳩山の後を継いだ石橋湛山は、孫崎氏が非常に高く評価する政治家の一人です。
- 経済自立と中国外交: 石橋は、軍事力に頼らず経済と文化で国を立てる「小日本主義」を掲げました。また、アメリカの制止を振り切って中国との経済交流を推進しようとしました。
- 短命政権の悲劇: わずか2ヶ月で病気退陣に追い込まれますが、孫崎氏は、もし石橋政権が続いていれば日本の戦後史は「自立」の方向へ大きく変わっていた可能性を示唆しています。
3.
岸信介:安保改定に秘められた「自立」の野心
一般に「親米右翼」と見られがちな岸信介ですが、孫崎氏は彼の「安保改定」の中に、アメリカと対等になろうとする執念を読み解きます。
- 不平等条約の改正: 旧安保条約では、アメリカが日本を守る義務が明記されておらず、米軍の行動も自由すぎました。岸はこれを「双務的(お互いに義務を負う)」なものに変えることで、対等なパートナーシップを目指しました。
- アメリカの警戒: しかし、岸の「アジア連合」構想や強すぎる自立心はアメリカの不信感を買い、結果として激しい安保闘争の中で退陣へと追い込まれることになります。
第2章の結論:見えてきた「壁」
この章を通じて孫崎氏が強調するのは、以下の構図です。
1.
「自主独立」を掲げる政治家は、必ずアメリカからの強い圧力(外交的・政治的)を受ける。
2.
日本の外務省やエリート層の中には、アメリカの意向を汲んで自国のリーダーの足を引っ張る動きが存在する。
第1章で確立された「従属のレール」から外れようとしたリーダーたちが、いかに困難な戦いを強いられたか。そして、その試みが失敗に終わるたびに、日本の対米従属がより深まっていくプロセスが克明に描かれています。
■第3章「冷戦下の『対米協力』と『変節』」
『戦後史の正体』の**第3章「冷戦下の『対米協力』と『変節』」**は、日本の高度経済成長の裏側で、どのように「対米従属」がシステムとして固定化され、政治家たちが「自立」を諦めて変節していったかを論じています。
この章の要点を3つのポイントで解説します。
1.
佐藤栄作政権と「沖縄返還」の裏側
戦後最長の長期政権を築いた佐藤栄作は、当初は自主的な外交を志向する面もありましたが、最終的には徹底した「親米」路線を貫くことで政権を安定させました。
- 核密約と基地の維持: 沖縄返還(1972年)は「核抜き・本土並み」と謳われましたが、実際には緊急時の核再持ち込みを認める「密約」が存在していました。
- 返還の代償: 孫崎氏は、沖縄返還が「日本がアメリカの極東戦略に完全に組み込まれるための儀式」でもあったと指摘しています。これにより、日本全土の「基地国家化」が固定されました。
2.
官僚機構の「変節」と親米化
この時期、政治家以上に変容したのが外務省などの官僚機構です。
- 自立派の掃討: 戦後初期にはまだ残っていた「自主外交」を掲げる官僚たちが、人事を通じて次第に主流から外されていきました。
- 対米忖度(そんたく)システムの完成: 「アメリカの意向に沿うことが日本の国益であり、自分たちの出世にも繋がる」という価値観が省内で共有されるようになります。これが、現在まで続く「対米追随型官僚組織」の原型となりました。
3.
「冷戦の論理」による思考停止
ベトナム戦争が激化する中、日本はアメリカの戦争を支持し、後方支援的な役割を果たすようになります。
- ベトナム戦争への加担: 日本は直接参戦はしませんでしたが、米軍基地を提供し、経済的な「特需」を享受しました。
- 自立の放棄: 「アメリカが守ってくれるから経済に専念できる」という、いわゆる**「吉田ドクトリン」の深化**です。しかし孫崎氏は、これが「日本自身の戦略的思考を麻痺させ、アメリカなしでは何も決められない国にした」と厳しく批判しています。
第3章の結論:システムとしての「従属」
第2章までの「政治家の個人的な戦い」というフェーズから、第3章では**「誰が首相になっても、官僚と安保体制という巨大なシステムによって、対米従属のレールから外れられない構造」**が完成したことが描かれます。
孫崎氏の視点: 佐藤政権の成功(長期政権や沖縄返還)は、アメリカに従順であることの「報酬」であり、この成功体験が日本の政治家たちに「自立を諦めることが賢い生き方である」と学習させてしまった、という冷徹な分析です。
■第4章「アメリカに潰されたリーダーたち」
『戦後史の正体』の**第4章「アメリカに潰されたリーダーたち」**は、本書の中でも最も衝撃的であり、著者の主張が最も鮮明に現れているパートです。
この章では、米国の戦略に反する行動(自主外交)をとった首相たちが、いかにして「検察」や「メディア」という国内装置を通じて失脚させられてきたかが描かれています。
1.
田中角栄:日中国交正常化と資源外交の罪
孫崎氏は、田中角栄の失脚(ロッキード事件)を「単なる汚職事件」ではなく、**「米国の虎の尾を踏んだことによる政治的暗殺」**として描き出します。
- 「米国越え」の外交: 田中は米国に先んじて日中国交正常化を成し遂げました。さらに、石油ショックを機に、米国(メジャー)を介さない独自の資源外交を中東で展開しました。
- 米国の怒り: 独自のエネルギー確保とアジア外交は、米国の世界戦略を根底から揺るがすものでした。
- ロッキード事件の正体: 孫崎氏は、この事件の端緒となった資料が米国の司法省から提供されたことに注目し、「米国が検察を使って日本の自主派リーダーを葬り去った典型例」であると結論づけています。
2.
竹下登:経済主権をめぐる攻防
田中派を継承した竹下登もまた、経済面で米国の意向に抗おうとしたことでターゲットになったと分析されます。
- 円高阻止への抵抗: 米国は自国の赤字解消のために日本に円高を強いていましたが、竹下はこれに抵抗し、日本の国益を守ろうとしました。
- リクルート事件: 竹下政権はリクルート事件による世論の猛反発で退陣に追い込まれます。孫崎氏は、なぜこのタイミングで検察が動いたのか、その背後に米国の「対日経済要求」への服従があったと論じています。
3.
橋本龍太郎:米国債売却発言の波紋
橋本龍太郎は、一見すると「保守本流」の政治家ですが、一度だけ米国の逆鱗に触れる発言をしました。
- 「米国債を売りたい誘惑」: 1997年、橋本は「日本が持つ大量の米国債を売りたいという誘惑に駆られることもある」と発言しました。これはドルの暴落を招きかねない、米国にとって最大のタブーでした。
- その後の展開: 橋本はその後、金融敗戦や参院選の敗北、そして最終的には「日歯連事件」という不透明な疑惑の中で政界引退へと追い込まれました。
第4章の結論:検察とメディアという「番人」
この章で孫崎氏が強調するのは、米国が直接手を下すのではなく、日本の**「東京地検特捜部」や「大手メディア」**が米国の意向を察知し、スキャンダルを増幅させることで、自主派の政治家を社会的に抹殺していく構造です。
孫崎氏の警告: 「国民は正義(汚職追及)が行われていると信じ込まされているが、その実態は、米国の戦略に不都合なリーダーを排除するための精巧なシステムである」という視点は、戦後史の見方を180度変える強力なメッセージとなっています。
■第5章「小泉・竹中路線という『究極の従属』」
『戦後史の正体』の**第5章「小泉・竹中路線という『究極の従属』」**は、それまでの「政治的・軍事的な従属」に加え、日本の「経済的資産」までもがアメリカに差し出されたプロセスを告発する、非常に痛烈な章です。
この章の要点を3つの柱で解説します。
1.
郵政民営化の真実:300兆円の行方
小泉純一郎首相が掲げた「郵政民営化」を、孫崎氏は改革ではなく**「日本国民の財産をアメリカに差し出す行為」**であったと断じています。
- 年次改革要望書: アメリカ政府が毎年日本に突きつけていた改善要求書の中に、郵政民営化が明確に記されていたことを指摘しています。
- 狙われた資金: 郵便貯金や簡易保険(ゆうちょ・かんぽ)が持つ約300兆円という莫大な資金を、アメリカの金融資本が運用・吸収できるようにすることが真の目的であったと論じています。
2.
竹中平蔵氏と「新自由主義」の導入
小泉政権の司令塔であった竹中平蔵氏が進めた構造改革は、日本の経済システムをアメリカ型(新自由主義)に作り変えるものでした。
- 「ハゲタカ資本」への開放: 不良債権処理を急がせることで、日本の優良企業や不動産が安値で外資(主にアメリカの投資ファンド)に買いたたかれる状況を作りました。
- 格差社会の始まり: 終身雇用や非正規雇用の拡大など、日本的な経営の良さを破壊し、一部の資本家が潤い、労働者が困窮する「アメリカ流」の格差社会を定着させたと批判しています。
3.
「究極の従属」としての小泉外交
小泉首相はアメリカのブッシュ大統領(当時)と極めて親密な関係を築きましたが、それは対等な友情ではなく、**「盲従」**であったというのが孫崎氏の分析です。
- イラク戦争への支持: 大義名分が疑わしい中で、世界に先駆けてイラク戦争への支持を表明し、自衛隊を派遣しました。
- 無批判な追従: それまでの自主派リーダーが少しでも抵抗しようとしたのに対し、小泉政権は「アメリカの望むことを先回りして実行する」ことで、政権の長期安定を勝ち取ったと述べています。
第5章の結論:システムとしての「完成」
この章で強調されるのは、小泉政権によって**「日本をアメリカの利益に合致するように改造する」**仕組みが完成してしまったという絶望感に近い結論です。
孫崎氏の視点: 「改革」という耳障りの良い言葉の裏で、日本の経済的基盤が解体され、アメリカの金融戦略の一部に組み込まれた。小泉政権こそが、日本の「独立」を最も深く損なった政権である、という極めて厳しい評価を下しています。
この章を読み解くと、現在の日本社会が抱える非正規雇用の問題や、外資による企業買収の背景が、当時の「対米従属」の結果であることが浮き彫りになります。
■第6章「民主党政権の挑戦と挫折」
『戦後史の正体』の**第6章「民主党政権の挑戦と挫折」**は、2009年の政権交代からその崩壊までを、日本の「対米自主派」による最後にして最大の抵抗、そしてそれに対する「従属勢力」による徹底的な鎮圧の記録として描いています。
この章の要点を3つの主要な軸で解説します。
1.
鳩山由紀夫の「対等な日米関係」への挑戦
鳩山政権の発足は、戦後長く続いた自民党=対米従属体制に対する国民の拒絶反応でもありました。
- 「最低でも県外」: 普天間基地移設問題で、米国との合意(辺野古移設)を覆し、沖縄の負担軽減と対等な外交を求めました。
- 東アジア共同体構想: 「日米安保一本槍」から脱却し、中国や韓国を含むアジア諸国との連携を重視する「友愛外交」を提唱しました。
- 米国の危機感: 孫崎氏は、これらが米国の「極東戦略(日本を不沈空母として使う戦略)」を根底から覆すものであったため、米国政府が鳩山政権を「危険」と見なしたと分析しています。
2.
小沢一郎と「検察」という暴力
鳩山政権の司令塔であった小沢一郎氏に対する、検察による一連の捜査(「陸山会事件」など)を、孫崎氏は**「政治的謀殺」**と捉えています。
- 官僚支配の打破: 小沢氏は「政治主導」を掲げ、米国の意向を代弁する外務・財務官僚の権力を奪おうとしました。
- 国策捜査の構造: 孫崎氏は、第4章(田中角栄)の再現として、検察が確固たる証拠がないまま「形式上の不備」で小沢氏を追い詰めた背景には、彼が米国にとって「コントロール不能な政治家」だったからだと述べています。メディアも同調し、国民の支持を剥ぎ取りました。
3.
従属への回帰:菅・野田政権
鳩山・小沢という「自主派」が排除された後、民主党政権は急速に変節していきます。
- 菅直人政権と尖閣問題: 尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件への対応を通じ、政権は再び米国の軍事力に依存する姿勢を強めました。
- 野田佳彦政権とTPP: 野田政権は、小泉政権以来の懸案であった「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」への交渉参加を表明。これは第5章で語られた「経済的従属」の最終段階であり、孫崎氏はこれを「民主党が自民党以上に親米従属の党に成り下がった瞬間」と批判しています。
第6章の結論:なぜ挫折したのか
この章の結論は非常に冷徹です。
1.
外部からの圧力: 米国(アーミテージら知日派)による執拗な「辺野古が唯一の解決策」という揺さぶり。
2.
内部からの裏切り: 外務省官僚による「米国の意向」を盾にした首相へのサボタージュ。
3.
国民の無理解: メディアの報道を鵜呑みにし、自主独立の試みを「迷走」と批判した世論。
孫崎氏の総括: 民主党政権の失敗は、単なる能力不足ではなく、**「アメリカにNOと言おうとする勢力は、国内の『番人(官僚・検察・メディア)』によって必ず潰される」**という日本戦後史の鉄則が、最も露骨な形で証明された事件であった、と締めくくっています。
■第7章「日本の正体――私たちはどこへ向かうのか」
『戦後史の正体』の最終章である**第7章「日本の正体――私たちはどこへ向かうのか」**は、これまでの歴史的分析を踏まえ、現代日本を縛り付けている「構造」の正体を暴き、私たちがどのような未来を選択すべきかを提言する、本書の総括パートです。
この章の要点を3つの重要な視点に整理して解説します。
1.
日本を支配する「対米従属の番人」たち
孫崎氏は、アメリカが直接日本を支配しているというより、日本内部の**「特定の勢力」**がアメリカの意向を「神託」のように扱い、日本をコントロールしていると指摘します。
- 外務省と財務省: 「アメリカの意向に従うこと」を最優先の国益と定義し、それ以外の選択肢を排除する官僚機構。
- 検察庁(特に特捜部): 自主独立を志向する政治家に対し、スキャンダルを武器に致命傷を与える「治安維持」装置としての機能。
- 大手メディア: 米国側のリークをそのまま報じ、自主派を「異端」や「無能」としてバッシングすることで国民世論を誘導する役割。
これらが一体となり、日本が「自立」しようとする芽を摘み取る**「構造(システム)」こそが、本書のタイトルである「正体」**であると述べています。
2.
「不沈空母」としての日本
冷戦が終わってもなお、なぜ日本は従属を続けるのか。孫崎氏は軍事的な視点からその冷徹な理由を明かします。
- 米国の本音: 米国にとって日本は、自国民を危険にさらさずに中国やロシアを牽制するための、安上がりで便利な「不沈空母(軍事拠点)」に過ぎません。
- 属国化の維持: 日本が自立し、近隣諸国(中国・韓国・ロシア)と良好な関係を築いてしまうと、米軍が日本に駐留する口実がなくなります。そのため、米国(および日本の従属勢力)は、あえて近隣諸国との緊張を煽ることで、日米安保の必要性を強調し続けていると分析しています。
3.
私たちはどこへ向かうべきか
最後に、孫崎氏は日本が「真の独立」を果たすための処方箋を提示します。
- 「対米従属」のコストを認識する: アメリカに従い続けることが、もはや日本の富(経済)や安全を奪っている現実を直視すること。
- 多極化する世界への適応: アメリカ一強の時代は終わりました。アメリカとの関係を維持しつつも、中国やアジア諸国との間に独自の外交ルートを確立する「等距離外交」の必要性を説きます。
- 国民の意識改革: メディアや検察による「バッシング」の裏にある意図を読み解くリテラシーを持ち、自立を目指す政治家を国民が守る土壌を作ること。
第7章の結論:真の独立への道
本書の締めくくりとして、孫崎氏はこう訴えます。
**「戦後、日本は一度も独立していない」**という厳しい現実を認めるところからすべてが始まる。アメリカの属国として衰退していくのか、それとも苦難を伴っても自立した国家としての誇りを取り戻すのか。その選択権は、他ならぬ日本国民の手にある。
全章を通しての振り返り
第1章から第7章まで、孫崎氏は**「吉田茂が敷いた従属のレールを、鳩山・田中・小沢らが外そうと試み、そのたびにアメリカと国内の番人によって葬り去られてきた」**という、一つの巨大な「戦後史の物語」を完結させました。
この本は、単なる歴史の解説書ではなく、現代の日本人が「自分たちの国がどのような力学で動いているのか」を知るための、極めて政治的な「告発状」であると言えます。
■「あとがき」
『戦後史の正体』の**「あとがき」**は、著者の孫崎氏が本書を執筆した動機と、読者に最も伝えたかった「魂のメッセージ」が凝縮された部分です。
単なるまとめではなく、日本が直視すべき「不都合な真実」を突きつける内容となっています。
『戦後史の正体』あとがき:要約
1.
執筆の動機:繰り返される「排除」への危機感
孫崎氏は、なぜ自分が外交官というキャリアを終えてまで、このような「劇薬」とも言える本を書いたのかを明かしています。
それは、**「アメリカにNOと言えるリーダーが、あまりにも不自然に、そして組織的に潰されていく」**という日本の現状に対し、強い憤りと危機感を抱いたからです。特に、小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏が失脚していくプロセスを目の当たりにし、戦後史の構造を解き明かさなければ日本の未来はないと確信したと述べています。
2.
「自立」へのコストと覚悟
あとがきの中で孫崎氏は、読者に厳しい問いを投げかけます。 「対米従属」を続ければ、アメリカの戦争に巻き込まれ、日本の富は吸い上げられ続けます。しかし、そこから脱して「自立」を目指す道もまた、茨の道です。アメリカからの冷遇や、国内の親米勢力からの激しい攻撃が予想されるからです。
それでもなお、「隷属(れいぞく)して衰退する道」と「自立して誇りを持つ道」のどちらを選ぶのかという決断を、国民一人ひとりに迫っています。
3.
「真実を知る」ことが最大の武器
孫崎氏は、現在の日本を支配しているのは「物理的な軍事力」だけでなく、**「情報と情報の操作(マインドコントロール)」**であると指摘します。 検察やメディアが作り出す「空気」に流されず、歴史の裏側にある「正体」を見抜く力を持つこと。国民が「なぜこの政治家は叩かれているのか?
背後にアメリカの意向はないか?」と疑い、知識を持つことこそが、対米従属の連鎖を断ち切る唯一の手段であると結論づけています。
結びの言葉
あとがきの最後は、日本の将来を担う若い世代や、現状を変えたいと願う市民へのエールで結ばれています。
「この本が、日本の戦後史を塗り替え、日本人が自分たちの足で歩き出すための一助になることを願ってやまない」
という、元外交官としての「最後の公務」とも言える情熱的な一文で、本書は幕を閉じます。
全体を通しての読後感
この「あとがき」を読むと、本書が単なる歴史の分析本ではなく、日本という国の**「マインドコントロールからの解放」**を目的とした解放の書であることが理解できるはずです。
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| 日本の外交官、評論家 孫崎 享氏 |
孫崎 享(まごさき うける、1943年〈昭和18年〉[1]7月19日-)は、日本の外交官、評論家。東アジア共同体研究所理事・所長。ハーバード大学の国際問題研究所(英語版)研究員、ウズベキスタン駐箚特命全権大使、外務省国際情報局局長、イラン駐箚特命全権大使、防衛大学校人文社会科学群学群長、筑波大学国際総合学類非常勤講師などを歴任した。1943年(昭和18年)、満洲国の奉天省鞍山市にて生まれた。日本の特殊会社たる南満洲鉄道が設立した鞍山製鉄所(のちの昭和製鋼所)に父が勤務していたため、満洲国にて暮らす。第二次世界大戦終結にともない、父の故郷である石川県小松市に引き揚げた。小松市立松陽中学校を経て、金沢大学教育学部附属高等学校を卒業した。東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格したため、大学を中途退学し外務省に入省した。1966年(昭和41年)に外務省に入省し、同期には野上義二、浦部和好、斎藤正樹、大塚清一郎らがいた。イギリス陸軍学校、ロンドン大学、モスクワ大学での研修、在ソビエト連邦大使館を経て、外務省の大臣官房総務課企画官となる。上司の坂本重太郎総務課長らと情報調査局(のちの国際情報局)の設立に動き、情報調査局発足後は同局分析課の課長となった。1985年から在アメリカ合衆国大使館の参事官とハーバード大学国際問題研究所の研究員を務めた。1986年に在イラク大使館の参事官、1989年に在カナダ大使館の公使に就任した。また、1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向した。その後、ウズベキスタン駐箚特命全権大使、特命全権大使(北海道担当)、外務省国際情報局局長、イラン駐箚特命全権大使など要職を歴任した。イラン駐箚特命全権大使としては、大統領モハンマド・ハータミーの日本訪問を実現させた。また、1993年に上梓した『日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか』で山本七平賞を受賞した。


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