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広角で見える「温暖化」の素顔
東京大学名誉教授・渡辺正
「広角」にして太平洋全体を眺めたら、印象はガラリと変わる。米国西海岸の水温は3月以降、平年より約2度は低い。案の定、サンフランシスコの気温は平年よりやや低いまま推移し、ロサンゼルスも涼しかった。昨年6~8月の寒かった南米沿岸や平年並みだった英国について、NHKが報じた記憶はない。
NHKの制作陣が確信しているらしい「怖い温暖化が進行中」も「CO2の削減が世界を救う」も、ただの幻想にすぎない。空疎な提案をするカネの亡者に、政府は補助金や研究費の形で巨額な血税を恵んできた。こんな茶番はいいかげんにやめよう。
その通りですね。マスコミ、特にNHKの報道は要注意です。
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東京理科大学教授 渡辺正氏 |
渡辺 正(わたなべ・ただし)は東京理科大学教授。1948年鳥取県生まれ。東京大学大学院修了、工学博士。東京大学助手、助教授を経て1992年より同大学教授(生産技術研究所)。2012年、同大学を定年退職(名誉教授)ののち東京理科大学に勤務。専門は生体機能化学、科学教育、環境科学。
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広角で見える「温暖化」の素顔
東京大学名誉教授・渡辺正
何かに適切な判断を下したいなら、写真の広角撮影と似て、全体を眺め渡すのが望ましい。そうでない姿勢を昔から「木を見て森を見ず」と言い習わす。
決着からまだ遠い温暖化(気候変動)問題だと、「人為的CO2が地球を暖めて害をなす」という風説の真偽を、時間・空間的に広角で眺めつつ吟味したい。
昇温の原因がCO2だけなら、どの場所の気温変化も似ていよう。だが現実はまるで違うのだ。
島国の気温を決める海水温
海水温の自然な周期変動は、20世紀末に見つかった。島国の気温には表層水温の高低が効く。
米海洋大気局(NOAA)によると今年の夏季、日本海を含む近海の水温は平年より5度超も高かった。気圧配置も効くにせよ、猛暑の主因は高温の海水だろう。
NHKの天気予報も、最近はときどき気温と近海の表層水温を並べて示す。しかし「広角」にして太平洋全体を眺めたら、印象はガラリと変わる。
米国西海岸の水温は3月以降、平年より約2度は低い。案の定、サンフランシスコの気温は平年よりやや低いまま推移し、ロサンゼルスも涼しかった。NHKがそこまで語れば、庶民の「温暖化観」も進化していくだろうに。
昨年夏の猛暑にも、近海の異常高温が効いたはず。だが太平洋の全景は今年と違い、南米(冬)の南端を洗う海域が特に冷たかった。沿岸域の酷寒を、海外メディアはたびたび報じている。
また昨年夏は、日本と同じ島国の英国で、近海の水温に特別な異常は起きていない。英国気象庁が公開した気温状況も「国土全体が平年並み」で、やや涼しい地域も少しあった。
昨年6~8月の寒かった南米沿岸や平年並みだった英国について、NHKが報じた記憶はない。
過去20年の昇温は体感未満
陸地の気温は、都市化で大きく上がる。東京の気温も、140年で3度ほど上がった。主因は熱源(電力消費と走行車両)の激増だろう。
NOAAは20世紀の末ごろ、地続き48州の観測点1218カ所を点検し(広角精神?)、都市の強い昇温を確認する。それなら都市は「地球の気温」を表さない、として田舎の観測点を精選した。48州に選んだ112地点のうち、北海道の1・4倍も広いオハイオ州には1地点しかない。そうやって決めた観測点群を気候基準観測網(USCRN)と呼び、2005年1月から実測結果を公表してきた。
上下動の激しい20年半の測定値から、昇温は0・2度(体感未満)程度と推定できる。だが同時期に研究者もメディアも「CO2温暖化の危機」を煽(あお)りまくった。
0・2度の昇温が、気象を激変させたはずはない。杉山大志氏も本欄に書いたとおり、降水や暴風に激化傾向は見られない。日本の台風なら、今なお「昭和の3大台風」がワースト3なのだ。
近ごろ豪雨被害が目立つ主因は、数十年前の高度成長期に造られた社会インフラの劣化だろう。
温暖化防止行動という茶番
7月11日にNHKが「おはよう日本」で、大規模事業者の施設に太陽光パネルを26年度から設置させる経産省の計画を、さも立派な話のように紹介していた。
同17日には、船の新燃料「eメタノール」でCO2排出を減らす話を絶賛した(英国の石油系大手BP社は5月下旬、排出削減はあり得ないと悟ったか、同様な航空機燃料の生産から撤退ずみ)。
NHKの制作陣が確信しているらしい「怖い温暖化が進行中」も「CO2の削減が世界を救う」も、ただの幻想にすぎない。
過去20年、再エネとEVが全世界で大増殖した。同じ期間に大気のCO2濃度は、むしろ増加傾向を強めている。だから削減策は、どれも机上の空論だった。
CO2排出量は、エネルギーの消費量にほぼ比例する。本件も広角で眺めよう。地球の昇温を10年で0・1度(前記)とし、昇温の(5%程度とみる人も多いが)半分をCO2が起こすとみて、40年後の「成果」を考える。
日本は世界の3%弱のCO2を出す。以上の数値を使う簡単な計算の途中を略し、結果だけ言おう。かりに日本がフッと消えても、つまり日本国のエネルギー消費がゼロになっても、40年後の予想昇温0・400度が、0・395度に減るだけの話だ。
まだ実例はないのだが、CO2排出を真に減らす行動があり得ても、効果は国全体の何桁も下だから、ゼロに等しいと言える。
空疎な提案をするカネの亡者に、政府は補助金や研究費の形で巨額な血税を恵んできた。こんな茶番はいいかげんにやめよう。
去る参院選のとき政見放送を見ていたら、気候変動を問題視する政党も候補者も、以前と比べ激減したようだった。いずれはゼロになるだろう。
NOAAのサイト紹介を含めた状況分析は、22年の拙著『「気候変動・脱炭素」14のウソ』(丸善出版)にもまとめてある。(わたなべ ただし)
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