最近、新聞コラムで学んだこと
人類はついに新たな段階に!?
エッセイスト、動物行動学研究家・竹内久美子氏
ChatGPT―4という、対話型AI(人工知能)の最新版リリースについての
動物行動学研究家としてのコメントですが、非常に参考になりました。
チャットGPTはパソコンなどで簡単に使える人工知能。写真は「チャットGPT」のロゴを表示するスマートフォン(ロイター) |
人類はついに新たな段階に!?
エッセイスト、動物行動学研究家・竹内久美子
1969年のアポロ宇宙船月面着陸以来の出来事だ、いや、産業革命にも匹敵する―。人によってはこれ以上の表現はないというほどの賛辞を贈る革新的技術が発表された。
ChatGPT―4という、対話型AI(人工知能)の最新版で開発元は米国のOpenAI社である。これが3月15日のこと。
背筋が凍る能力を持つAI
ChatGPTはそもそも、昨年11月に最初の版がリリースされたのち徐々に改良を重ね、4では単に優秀なだけでなく、我々が背筋が凍りそうになるくらいの危機感を覚える、クリエーティブな能力を備えるに至った。
さらにインターネットにつながる環境さえあれば、誰でも今すぐ無料で使用することができるという強みを持っている。従来のAIでは付属機器を購入するなど、使用のために手続きとお金を必要としたこともあったが、それとは対照的だ。
ChatGPT―4が具体的にどうすごいのか。
たとえば米国の司法試験の模擬問題で、人間の上位10%のスコアをたたき出すことができ、合格間違いなし(1つ前の3・5バージョンでは下位の10%であり、これでは合格できなかった)。その他の専門的、学術的分野でも人間レベルのパフォーマンスができる。
指示に従って小説、エッセー、脚本、詩などが書ける。文章だけでなく、受け取った画像に対しても返答できる。たとえば小麦粉、卵、ミルクの写真を示し、これらを使って何ができるかを聞くと、「パンケーキ、ワッフルなど無限の選択肢がある」と答える。
ジョークの写真にも、どこがどう笑えるかを答えることができる。作詞、作曲も可能だ。
一方で、むろん問題点も少なくない。
3・5バージョンではかなりの割合でトンチンカンな答えを出し、しかも自信満々に答える。ある人が自分の名を入力したが、同姓同名でもないのに、落選中の政治家であると説明されたし、近所でおすすめの焼き鳥屋を聞いたが、5件中実在するのはたった1件であったという。
恐ろしくて試していないが
ただしこのような点はあっという間に改善されるだろう。返答が攻撃的であるとか、差別的であることもあるが、これらもすぐに改善されるはずだ。
深刻なのは知的労働者の仕事が奪われることだ。恐ろしくて試していないが、「ChatGPT―4をテーマに竹内久美子風の文体で『正論』を指定の文字数で書け」と命ずれば、もっともらしい原稿を書いてくれることだろう。
学力の低下も確実だ。学生の大半が既に宿題や論文作成のために利用したことがあるといい、ニューヨーク市では学生と教師はこのサービスにアクセスできないようにしたという。当然、学問分野も機能不全に陥る。
フェイクニュースが大量に発生し、人間の意見とAIの発する意見とがごちゃまぜとなり、世論がおかしな方向へと向かう。世論操作は現在、既にある程度は行われているが、民主主義が、もっとひどく脅かされることになるだろう。
こういう状況に対し、本家のOpenAIは、情報操作、世論誘導、教育、学問分野での不正行為などを正すべく、人間がつくったか、AIがつくったかを判定するツールを改良中だという。
AIの飛躍的革新を目の当たりにすると、どうしても気になるのはシンギュラリティがやって来るのか、それはいつ頃かということだ。シンギュラリティとは発明家で思想家のレイ・カーツワイルが2005年の著書『シンギュラリティは近い』で示した概念で、AIが人間の知能を超える技術的特異点、あるいはそれによって人間生活が大きく変化する時である。
「子育て」の英知活かすとき
カーツワイルは当時それを2045年と想定したが、ここ数年のAIの進歩を考えると、目前と言っていいだろう。
この件についてOpenAIの創設者の1人であるサム・アルトマンは言う。「シンギュラリティが来るのは確実だ。問題はAIが意志を持つかどうかである」
2015年、アルトマンとともにOpenAIを共同で設立したのが、かのイーロン・マスクであるが、彼はネット上に一度あがった情報がとめどなく拡散していく、バイラル現象に警鐘を鳴らし、設立から3年で同社を去った。2022年12月4日になると「ChatGPTは恐ろしくよくできている。我々は危険で手ごわいAIからそう遠くないところにいる」とツイートしている。
ともあれ、事がここまで進んだ以上、AIが意志を持つかどうかと言っている場合ではない。意志を持つことを前提にすべきだ。
その際、我々としては人類が蓄積してきた英知で対抗するしかないだろう。特に、子育てのノウハウを活(い)かしてAIを伸ばし、あしらい、なだめる…。AIの産みの親はほかでもない、人間なのだから。(たけうち くみこ)
エッセイスト 動物行動学研究家 竹内久美子氏 |
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