私の好きなアルピニスト
私が気に入った新聞コラムから学んだこと。
娘とともに「山は人を育てる」実感
登山家 野口健氏
登山家 野口健氏 |
野口 健(のぐち けん、1973年8月21日 - )は、日本の登山家、環境活動家。亜細亜大学国際関係学部卒業。NPO法人PEAK+AID(ピーク・エイド)代表(2020年時点)として、ヒマラヤ・富士山での清掃活動といった環境保護への取り組み、また遭難死したシェルパ族の子どもたちへの教育支援「シェルパ基金」やヒマラヤでの学校建設・森林づくり、第二次世界大戦の戦没者の遺骨収集などの社会貢献活動を行っている。
野口健 娘とともに「山は人を育てる」実感
「してもいい無理と、してはいけない無理があるんだよ。ここから先はしてはいけない無理」と娘に伝え、山を下ったのは約10年前。小学4年生の娘を冬の八ケ岳に連れて行ったときのやり取りだ。吹雪の中、「指が痛い」と泣いていた娘が下山後、「キリマンジャロ(アフリカ最高峰、5895メートル)に登りたい!」と言って僕を驚かせた。
それから約3年間、キリマンジャロを想定した2人合宿を繰り返した。雨が降る中、10時間以上歩かせたことも。そして、2019年7月、キリマンジャロに登頂。山頂直下で天候が急変。吹雪で視界が遮られる中、寒さに耐えながら山頂に立ったときには2人で抱き合って涙を流した。それだけギリギリの状況だった。最終キャンプに戻ったときの娘の発言に耳を疑った。「あの状況で登れたのだから、次は6000メートルだよね~」
あれから4年。今年1月、僕らはヒマラヤのアイランドピーク(6189メートル)を目指した。厳冬期の6000メートルは過酷。まずは低酸素に体を慣らすために徹底的に高所順応を行った。最大の敵は風だった。他のチームは強風のために撤退。しかし、風が弱まるときは必ずくる。その隙間を狙えばやれる。娘には「気持ちさえ切れなければチャンスはある」と伝えた。
そして、1月18日に狙いを定めた。早朝、強風の中、アタックを開始。暗闇の中、ヘッドランプに照らされた娘の顔は寒さのあまり苦悶(くもん)の表情。しかし、日の出とともに風が弱まり、核心部の氷壁に取りかかったときにはピタリとやんだ。落石や、ズタズタな氷河の状態に苦戦はしたものの、午前11時にアイランドピークに登頂。1畳ほどの狭い山頂で固く握手を交わした。八ケ岳で泣いていた娘の顔とはまるで違う明確な意思を感じた。山は人を育てるのだ。
フラフラになりながら2人してベースキャンプに戻った。「紙一重だった。18歳の娘にむちゃさせすぎたかな」と内心ゾッとしていた。と、そのとき「ね~パパ、大変だったね。もうさ、人生で一番疲れたよ。ね~次はどこを狙う?」。もう驚かない僕がいた。もう一丁、やりますかって。
■私は山はまったく縁がない人間ですが、父と娘が同じことをやって
成長する姿には感銘を受けます。
すごい親子ですね。これからも気をつけて頑張ってもらいたいですね。
山は人を育てる。なかなか言えない言葉です。
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